小説 官能アドレセンス 29 自分を愛する気持ち

前回はこちらへ「一緒に行ってください。お願いです。大空さんがいないとなんにもできないから」 亜希江に懇願された。ひれ伏し、足にすがりつき、指をまた舐めようとする。 気持ちが悪い。それでいて、以前の快感を思い出してゾクッとしてしまう。この可愛いくて生意気な女をどうにかしてやったらおもしろいだろうか、などと考えてしまう。 紀里夫はボソッと「行ってあげたら?」と言った。 おまえなあ、という気もした。 私と紀里夫の関係はまだきちんと清算されていない。そこに亜希江が入ってくるなんて。 いままでは考えもしなかった生活の変化だった。 他人が2人も一緒にいる。 それでいて、愛が定まらない。 愛と性をわけて考えることもできないので、もし亜希江と性的な快楽を共にするのなら亜希江を愛する覚悟が必要になる。それは紀里夫を受け入れたときとはまったく次元の違うことに思えた。 この年齢で未知の世界に踏み込むのは、自分としても耐えられないような気がする。自分が壊れてしまいそうだ。 では、紀里夫への愛がゼロになって、もはや砂漠のようにカラカラなのかと言われると、やはりこんな近くにいて別々に寝ているのはしっくり来ないし、私の性の捌け口は彼に受け止めて貰わなければ困る気もする。 この数年の惰性に頼っているのだろうか。本当に愛しているのは紀里夫だからか。ではどうして芳清に嫉妬してしまうのか。 芳清は亜希江を緊縛し、芳純が紀里夫を緊縛していたあの日。いまにして思えば、芳純と紀里夫の仲を見せつけられてショックを受けつつも、実はこの亜希江という妙な生き物を縛ってあげている芳清に嫉妬していたのではないかと、帰りの新幹線で気づいたのだった。 私は芳清とはまったく触れあったこともない。彼が私のことをどう感じているのかも知らない。芳清は私のことを、紀里夫の彼女として見ている。それが妙に悔しい。 私自身が古い概念にとらわれすぎているのだろう。 だからといって、芳純と望月夫人のような関係はいまのところ、まったく理解できない。 たとえば、亜希江とも紀里夫とも性を愉しみ、亜希江が紀里夫と抱き合っていても嫉妬しない、といった関係はムリだ。 もしそこまで認めるようになったら、それはもはや私ではない。 望月夫人の思考からすれば、「そんなちっぽけな自分なんて捨ててしまえばいい」と言うかもしれない。そうは言われたくないので、絶対に望月夫人に相談はしないつもりだ。 このちっぽけな自分と30何年生きてきて、いまさら捨ててしまうことなんてできない。 自分を愛する気持ちもあって、その方向はこのちっぽけな自分なのだ。 その気持ちのまま、ポリアモリーな関係を受け入れることはできない。 ポリアモリーについては、帰りの新幹線の中で少し検索した。それは、私の知る限り、お互いに承諾を得て性的な関係を持つ自由を重視した関係。私の場合なら、紀里夫と芳純の性的な関係を私が認める。紀里夫は私と亜希江の性的な関係を認める。亜希江は私と紀里夫の性的な関係を認める。望月夫人はすでに芳純が紀里夫と性的な関係を持つことを認めている。 そして芳純は望月夫人がほかの誰かと関係を持つことを、認めているに違いない。 この関係は、頭の中で想像すると最初はそれなりに美しい世界に見えなくもない。 だが、恐ろしい。 たとえば私が芳清と関係を持ちたいと願ったとき、紀里夫と亜希江に承諾を得る必要があるだろうし、芳清側にも特定の相手がいるのなら、承諾が必要になっていくだろう。 芳清が誰の承諾を得るのか、私は知りたくない。彼のセックス相手のことを知らなければならないなんて……。そしてその女から、「大空さんとならいいわよ。じゃあ、私も紀里夫さんとしちゃおうかな」とか言われたら……。 どうしても芳清としたければ、紀里夫と亜希江がもし承諾に渋ったとき、私が彼と彼女のやりたい相手への承諾を交換条件にしてくるかもしれない。「紀里夫さんとできないなら、芳清ともしないでよね」と見知らぬ芳清の女から言われるわけだ。 こんな複雑な交渉は、国連だとかASEANとかTPPとか、数カ国の間でしょっちゅう起きていることだろう。そんなことを、私は日常の中で、しなければならないのか。 大きな利点も見える。ポリアモリーの都合のいい部分。 浮気とか不倫とかで騒ぐ必要はなくなる。関係者が認め合っているのだからそれでいい。そして、新たな性的な関係を結ぶにあたって、これまで愛していた人と別れる必要もない。別離ではなく承諾で解決する。 私の恋愛観からすれば、私が亜希江とセックスすれば、紀里夫への裏切りになるし、紀里夫が芳純とセックスしているのは、私への裏切りだ。たとえ私と出会う以前からの関係だったとしても、だ。 私と紀里夫の関係を終わりにしなければ、紀里夫は芳純と交わることはできないし、私は亜希江と交わることはできないはずではないか。 私の本意ではないとしても亜希江と関係を結ぶようになったあとに、芳清と関係をしたいと私が思ったら、亜希江との関係を終わらせるしかない。 関係をはじめる大変さに比べて、関係を終わらせることは容易だと勘違いしている人も多い。 少なくとも承諾を得るよりは、関係を終わらせた方が手っ取り早いように感じてしまう。 私も、いまこういう状況になって、それは違うと気付いた。 関係を終わりにすることは、かなりの悲しみや怒りといった最大値の感情が伴うだろうし、エネルギーを消耗してしまうだろう。簡単に言えば、身も心も削り取ることになるだろう。 悲劇的な結末は、別れ話につきものだ。恨んだり、恨まれたり。憎んだり憎まれたり。自殺したり相手をつきまとったり、刺し殺したり。 その点では、もしもポリアモリーなら、そこまでもつれないかもしれない。 それともポリアモリーでもまったく同じで感情を爆発させ、承諾を得ようがどうであれ、悲しみや怒りや憎しみに身を焦がすことになるだろうか。 人には独占欲がある。 自分だけの君、あなただけの私、と言いたいだろうし。「愛ってそういうものだよね。お互いに必要とする者同士が、2人だけになって、しっかりと絆を結ぶものだよね」と恋人同士は考えそうだ。実際、私は過去にそう何度か思ったこともある。 2人きり、2人だけ。それが喜びに直結していた。 あの気持ちはどうなってしまうのだろう。消えてしまうのだろうか。 簡単に解けそうな数学の問題を渡されて、これなら休み時間にちょっと考えれば解けるだろうと思ったら、いつまでたっても解決の糸口が見えてこないような、そのまま徹夜してしまったような、とてつもなくもどかしい時間を私は過ごしていた。 亜希江の撮影がなければ、どうにかなってしまったかもしれない。 紀里夫を追い出すか、自分が出るか。 ホテルに泊まろうと思ったりもしたが、1泊、会社で徹夜しただけでその考えも捨てた。やはり自分の部屋があるのに、そこに堂々と寝ていいはずだ。自分が出るのは悔しい。「ケガ、してない?」 撮影が終わって亜希江に抱きつかれて、私は優しい声をかけていた。心配であることには変わりない。亜希江の体がどれほど汚されていようと、私は素直に彼女の温もりを感じてホッとしてもいた。「大丈夫、だと思うけど」 撮影がはじまってすぐに、いくつか明らかに痛いことをされて、彼女は泣きわめいたのだが、それはまったく演技ではなく当然の反応で、非情にもそれを監督たちは喜んで撮影していた。 ソフトな2本では亜希江の下手な演技が目立ち、セリフを削られ、シーンを変更され、芝居部分もカットされるなどして撮り終えたのだが、そもそも亜希江は演技ができなかった。 マネージャーの松井にそのことを思わず確かめていた。「ええ、彼女、演技のレッスンは受けているんですけど、あまりいい報告はないですね」 松井は平然としていた。自分の商品の欠陥は認めない主義なのか。「でも、AVの場合、自然さが重要だと思うんです。彼女の、彼女ならではの反応が欲しいので、演技力はいまは、そんなに求められていないのです」 松井はそんな言い方をした。 これではまるで犬や猫ではないか。基本は教えるが、あとは自然のままの表情を狙って撮影して、あとで使えるところを編集すればいい。要するに必要なときに必要な場所にちゃんと存在してくれればいい、というような。「あ、もちろん、うちと正式契約となれば、もっと幅を広げてもらいたいのでちゃんと勉強をしてもらいますけど」 松井は事務所の代表のようなことを言う。 亜希江は今回、この3本のAVだけを松井のいる事務所と契約していた。お互いに慎重だった。 この3本の反応しだいで亜希江は事務所に所属することになるかもしれないし、他の事務所からよりよいオファーが受けられるかもしれない。昔のイメージなら、そんな天秤にかけるようなことは許されなかった。だいたい、亜希江によれば、この事務所には300万円もの借金がある。それをこの仕事だけでチャラにできるはずもない。 AVに出ることで、これまでのグラビアやアイドルっぽい仕事にどんな変化が出てくるのか予想がつかない。「なんか変な感じ」 亜希江はそう耳元で囁く。「さっきまで、酷い目に遭って、でも、夢に見た拷問に興奮しすぎていたんだけど、大空さんとこうしていると、違う意味で気持ちがいいの」 うんうんと松井がうなずいている。「はあ、大空さん。私、こんな女だけど、嫌いになった?」★小説「亜由美」第一部★DMM.R18版はこちらへDLSite版はこちらへアマゾンkindle版はこちらへ女子大生となったばかりの亜由美。剛介との出会いから、自らのマゾ願望がいっきに開花。理不尽な辱め、処女喪失、輪姦からはじまってタップリ、被虐を味わうことになります。★小説『亜由美』第二部★DMM.R18版はこちらへDLSite版はこちらへアマゾンkindle版はこちらへメス豚女子大生となった亜由美への本格的な調教が繰り広げられます。大学でも便所でも商店街でも……。苦悶と快楽が彼女の日課になっていきます。★小説『亜由美』第三部★DMM.R18版はこちらへDLSite版はこちらへアマゾンkindle版はこちらへメス豚女子大生・亜由美の完結編。壮絶な輪姦合宿から同じ大学の女子を巻き込んでの拷問実験へ。連載時にはなかったエンディング。今日のSMシーン緊縛女生徒雪化粧 鞭連打・蝋燭責め
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